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ブノワ・リショー:インタビュー「音楽は私にとってナンバーワンの芸術」

フィギュアスケートのコンペではお馴染みの、キスクラに着座する強面の紳士(失敬)ブノワ・リショー氏。お眼鏡に叶った優秀な生徒しか受け付けないという、人気の振付師である彼のインタビュー記事です。

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Benoît Richaud: “Music is the number one art for me”

January 10, 2024 By Iana Saveleva
Absolute Skating

ブノワ・リショー:音楽は私にとってナンバーワンの芸術

かつてアイス・ダンスの競技者だったブノワ・リショーは驚きの選手名簿を持つ世界的に有名なコレオグラファーだ(WIkipediaによれば振付けを施した生徒数は50名以上!)。彼の作品はときにスケート・ファンから激しいリアクションを受ける。

グランプリ中国杯の期間中、我々はブノワ・リショーと短いながらも印象的なコミニュケーションをとることができた。彼の創造の源はどこから湧き出るのか?振付けのプロセスは?音楽は?などなど。

毎シーズン、先生の振付けに楽しませてもらってますが、数も豊富で分野も様々です。インスピレーションはどこからくるのか、教えていただけますか?

うーん、説明するのは難しいですね。ひとつではないので。僕の人生がたくさんの財産を僕にプレゼントしてくれたおかげで、これまでの人生経験からインスピレーションが沸くんだと思います。リアルに僕自身の人生。どこで何をしたか、どんなチャレンジや喜びがあったか。それら全てがインスピレーションの源になっています。

面白いですね!では、先生の経験をどのようにして振付けに転換させるんでしょう?

実は僕が自分自身を表現する際、体で表すより、話したり書いたりする方が多いんですよ。ただ、言い表すのが難しいものもある•••でも、自分が表現するものは体の動きなので、常にこの二つが共存してますね。何かを説明したいんだけど、うまく言葉では言えない、そんなときは感じたまま動きで伝えることができます。

振付けのプロセスはどんな感じなんですか?予め頭でアイディアを練っておくんですか、それとも全てリンクに上がってからスタートする感じですか?

やり方はひとつに決めてません。いつも苦労するところです。なぜなら、僕が作るものは誰かのためであって、自分のためじゃないからです。スケーターにとって振り付けは勝敗を決する重大なパート。僕はできるだけ準備はせず、自分のフィーリングを信じるタイプですね。ストレスも恐怖心もありません。唯一前もって決めておくのは、音楽。当然ですけど。でも音楽の選択肢がたくさんあるときは、そのときになって選手と創り上げることもあります。僕は壁を作りたくないんです。ただでさえルールに縛られていて、創造のプロセスに限界を作りがちじゃないですか。たとえば今年のアダムのショートプログラム、異なる音楽の選択肢がありました。そこで我々はリンクの上で、プログラムのことは一旦考えるのをやめて、ただ音楽のことだけ考えて振付けしてみようと思ったんです。始めてすぐ、生き生きとしたものが生まれました。本当は『The Prophet』を使うつもりはなかったんですけど、色々試していくうちに、これが一番いいとわかったんです。

ルールがあることによって、振付けをする上でどれくらい表現を狭められてしまうものですか?演技時間やステップシークエンスの規定など、先生のアイディアをそこに収めるのは難しいですか?

ルールはよくできていると思うし、そこに適応させるのは簡単です。むしろルールがあって嬉しいし、感謝したいぐらいです。だって僕への挑戦状だと思うから。どう攻略するか、それを楽しんでますから、自分に対する挑戦だと受け止めています。もちろん、できることならルールに縛られずに振付けしたいとも思いますが、ルールを守ることが難しいと思ったことは一度もないですね。

先生がプログラムに使う音楽はいつも独創的ですよね。どこで見つけてくるんですか?それとドンピシャの曲を見つけるまでに何回くらい探すんですか?

音楽は僕にとって一番の芸術。僕を一番感動させられるものです。自分の人生と切り離せないものだし、常に音楽を聴いています。アダムのコーチ、セドリック・ツアーはミュージシャンで、僕は彼と強いつながりがあるんです。彼とは毎日のように音楽の選定をしてます。完璧な選曲をするには何度も何度も聴くことです。だからそこに多くの時間を費やします。クラシックみたいな人気の曲ももちろん大好きですけど、フィギュアスケートでまだ誰も使ってないような音楽を見つけ出すのが楽しいんです。スタンダードな曲を使うときでも、自分なりのユニークな方法で振付けするようにしています。

セドリック・ツアーと音楽をアレンジするプロセスについて具体的に教えていただけます?いつも音楽の楽譜から始めるのか、プログラムの構成から始めるのか?

普通、振付けの時間はスケーターのスケジュールに左右されるので、まずは大体、音楽を準備するところから始める人が多いです。でも我々は振り付けのプロセスと並行して音楽をアジャストしていくんです。その方が時間が短縮できるから。

おふたりはプログラムのタイミングに完璧に合うように、どうやって音楽をアレンジしていくんですか?

いやあ、セドリックが僕のことをよく理解してるんですよ。彼は僕の分身みたいなものです。

個人的に使ってみたい音楽ってありますか?これまで使ってない曲で。

みんながよく知ってるクラシックの名曲は絶対やってみたいですね。『白鳥の湖』とか『ボレロ』とか『カルメン』、『月光の曲』、『アダージオ』、ほかにも。それらを僕なりのモダンでコンテンポラリーな感性で解釈を加えてみたいです。

先生は今まで世界中のスケーターたちと、違ったアプローチだったりスケーティングスタイルだったり異なる習慣や言語でタッグを組んできましたよね。仕事をする上で何が一番のチャレンジになりますか?そして何が一番楽しめる要素になるでしょう?

僕の仕事で一番楽しいところは、みんなと一緒にやれるというところ。世界はなんて広くて、我々はなんてちっぽけなんだろうと気付かされるんですよ。いつもできるだけ自分に正直でいようと思っています。でもどの場合でも、スケーターを輝かせる方法を見つけなければいけない。みんなそれぞれ違うので、同じやり方じゃいけない。彼らが持つ文化だけじゃなく、個性についても考えなくちゃいけない。スケーターのことを感じ取る才能の中に、よい振付けを生み出すための鍵がある。そして彼らの要求に気付く才能が僕にはあると思う。

これまでで一番気に入っているプログラムを3つ挙げていただけますか?個人的に一番満足したプログラムで。

それは選ぶのが難しいですね。だって自分のプログラムに満足することがないから。昔に振付けたプログラムは見るのも嫌です。

だったら、ひとつでもよいので、ご自身の振付けの中で、一番思い出に残るプログラムは?

なら、前回のグランプリ(2023グランプリ・フランス大会)でアダムが滑ったフリープログラムですかね。ライブで見てましたが、その瞬間を感じられたのは素晴らしい光景でした。

では、最後に不躾な質問なんですけど、どうして先生のインスタグラムは画像が黒白なんですか?なにかこだわりの理由でも?

特別な理由はないんですけど、それが好みなんです。ミニマルで、シンプルで、おしゃれで、美しくて、僕の目を楽しませてくれるから。

貴重なお時間をありがとうございました。先生と先生の生徒さんたちに幸運をお祈りしています。今後も新しい傑作を楽しみにしています。

(訳:まくりあ)

原文はこちら


ここ数年でボワーッっと赤丸急上昇のブノワ・リショー先生。
私的には坂本花織選手の『アメリ』(2017-2018フリー)が印象深いです。坂本さんとはこれが初共演ですかね。

一番オキニなのがアダムさんの今年のフリー?
超個性的なブノワ氏と超個性的なアダム選手。最強説ありですね。

そしてブノワ先生の作る『白鳥の湖』!
これ絶対見てみたいわ!!

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