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数字で検証:フィギュアスケート4回転時代/バンクーバーから平昌まで

4回転時代の狭間となった2010年バンクーバー五輪を起点とする男子最高峰の技と勝敗を見事に分析した中国メディア「新浪体育」の記事。フィギュアスケート好きのあなたにこのワクワクをお届けします!

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数字揭秘:从温哥华到平昌 见证四周跳火拼时代

2016年07月26日 新浪体育
https://sports.sina.cn/others/winter/2016-07-26/detail-ifxuhukz1061301.d.html

【引用元:親浪体育】

4回転ジャンプ(quadruple jump)はフィギュアスケートの中で最も難しい技のひとつだ。選手は滑走中、片足で宙に飛び上がり、空中で4周―即ち1440度回転してから片足で着氷する。 6年前のバンクーバー・オリンピックでは、アメリカのライサチェク選手が試合で1度も4回転を飛ぶことなく金メダルを獲得。その是非については、4回転の基礎点を上げること、4回転には3回転より高いGOEを設定することなどをISUに求める空前の”4回転論争”を巻き起こした。それ以降、男子フィギュアにこの技を避ける風潮は消え、再び4回転時代が到来したのだ。

誰もが口にする。
4回転ジャンプを見た時の鳥肌が立つような感動を。圧倒的なパワーとスピード、流れ。視覚に鮮やかなインパクトを与えるその動き。先シーズン、男子シングルの上位選手はこぞってジャンプの難度を競い合い、毎試合熾烈でスリリングな4回転戦争を繰り広げて観衆の心に強い印象を残した。
2011年から2016年のシーズンにかけて世界選手権で男子シングル選手が飛んだ4回転をデータ化し、この「4回転トレンド」の流れについて細かく分析してみた。

【ますます増える4回転・・・】

近年、男子シングルの争いは激化している。選手は次々と高得点を連発し、プログラムに組み込む4回転の数を増やしている。
2011年のモスクワ大会では30名の参加選手のうち4回転を試みたのが11名だったのに対し、2016年は20名に倍増した。

2011年から2016年までの間、世界選手権の男子シングルで選手が試みた4回転の総数(回転不足含む、パンクは含まない)も年々増加していることがわかる。2011年世界選手権ではトータル23個、2016年世界選手権では49個と、これまた2倍に増えている。

4回転ジャンプは単発或いはコンビネーションに組み込んで飛ぶ。上の図のとおり、コンビネーションで飛ぶ4回転(赤)は単発で飛ぶ4回転(青)ほど増えてはいない。そして2016年の世界選手権では前年と比べ増加数が一気に11個となっており、単発の4回転が多くを占めている。

【TOP10入り選手の4回転の精度は?】

4回転ジャンプの数だけ見ると驚異的なスピードで増えてはいるのだが、その上昇傾向に伴っていないのが4回転の成功率だ。
下の赤い折れ線グラフは世界選手権で男子シングル選手がクリーンに4回転を決めた成功率でほぼ平均している。一方、青い折れ線グラフは10位以内に入った選手の4回転成功率だ。データ上、世界選手権で4回転がクリーンに決まる確率は50%ラインを上下している。一気に落ち込んでいる2015年を除き、他の5年を見てみると平均50%と言ってよいだろう。TOP10の選手が4回転を決める確率は安定しており、全体の平均より8~9%上回っている。

難度の高い技はそれだけリスクも伴う。4回転ジャンプの失敗率は他の技と比べ群を抜いて高くなっている。一流選手とて容易に攻め落とすことのできない最難関なのだ。2015年、2016年両世界選手権の4回転成功率は明らかに下降傾向にあり、TOP10の選手に特化しても然りである。

4回転ジャンプの完成度を測るのは、試合中審判が裁定するGOE(出来栄え点)だ。たとえば、綺麗な4回転ジャンプが決まると、基礎点に加え最高3点のGOEが与えられる。一方、失敗して転倒した場合は4点を失うこととなる。この6年間、世界選手権で飛んた4回転ジャンプのGOEは平均するとマイナスであり、かつ下降傾向にある。

2015年の上海世界選手権では単独の4回転ジャンプの平均GOEは-1.18、TOP10の選手に限ると-1.09である。2016年のボストン大会では平均GOEが更に減っている。ここで注意しなければならないのは、2015-2016シーズンからISUのルールが改定され、4回転ジャンプはGOEの減点幅が広がったことだ。この影響で2016年の4回転ジャンプでのGOEが過去最悪となったと言える。

【23歳が男子シングルのピーク?】

フィギュアスケートには男子シングル、女子シングル、ペア、アイスダンスの4つのカテゴリがある。種目が違えばピークを迎える時期も変わる訳だが、男子シングルに関してはパワーと豊かな表現力が成熟する22歳から24歳がパーソナルベストを出しやすい時期だと言われている。

下の図はここ6年の世界選手権で4回転ジャンプを飛んだ男子選手の年齢分布図だ。2011年に4回転ジャンプを飛んだ11名の平均年齢は22.6歳。2016年世界選手権の同じく20名の平均年齢は22.5歳。この数値は過去6年間、驚くほど酷似しており、毎年平均して22歳から23歳を行ったり来たりしている。更に言えば、これは上述の法則と同期していることからも、「男子シングルの黄金年齢は23歳説」は立証されたと言って構わないだろう。

世界選手権で4回転を飛ぶ最年長の選手は28歳前後で、2011年2012年のケビン・ヴァン・デル・ペレン選手、2013年のブライアン・ジュベール選手、2014年のジェレミー・アボット選手、2015年のセルゲイ・ボロノフ選手、2016年のオレクシイ・ビチェンコ選手となっている。

一方、最年少は17歳前後となっており、2011年のアルトゥール・ガチンスキー選手、2012年の羽生結弦選手、2013年のマキシム・コフトゥン選手、2014年の閻涵(イェン・ハン)選手、2015年のナム・ニューエン選手、2016年の金博洋(ジン・ボーヤン)選手となっている。

【表彰台争い】

6年前のバンクーバー・オリンピックでの4回転論争では、「4回転を飛ばない選手は男ではない」発言まで飛び出した。確かに今では4回転を飛ばない男子選手は世界選手権の10位以内に入ることが難しいだろう。ましてや表彰台を狙うのであれば、複数の4回転が必要である。

下図はここ6年間の世界選手権でメダルを獲得した男子シングル選手が飛んだ4回転の本数だ。2011年にチャンピオンとなった陈伟群(パトリック・チャン)選手はショート・フリー合わせて3本の4回転を飛んだ。これが2016年になると、チャンピオンのファビエル・フェルナンデス選手は合わせて5本の4回転を飛び、銅メダルのジン・ボーヤン選手は6本の4回転(ショート2つ、フリー4つ)を飛んでいる。上位に行けば行くほど、その争いは熾烈になっている。

4回転は踏切時の動作によりジャンプの種類が分かれており、難度の低い順に、4T(トゥループ)、4S(サルコウ)、4Lo(ループ)、4F(フリップ)、4Lz(ルッツ)、4A(アクセル)となっている。フィギュアスケートのルール上、同じ種類の4回転はショートプログラムでは1度だけ、フリーでは2度(1つ目は単独、2つ目はコンビネーション)までと定められている。そのため、回数を増やしたい場合、1種類の4回転ジャンプが飛べるだけではダメなのだ。では、複数種類の4回転をマスターすることは必要不可欠なのだろうか?

以下の表を見ると、2011年から2015年までの5年間、世界選手権で2種類の4回転を成功させた男子選手は毎年2名だったのに対し、2016年の世界選手権では一気に5名に増えており、メダリスト3名はそこに含まれている。

世界選手権でフリーに進むTOP24を目指す選手に限って言えば、まだ複数種類の4回転取得は急務ではなく、ショート・フリーでそれぞれ最低1回の4回転ジャンプを成功させ、ミスなく滑り切ればそれ相応の得点はついてくる。しかしTOP5或いはメダル獲得に照準を合わせるのであれば、1種類の4回転だけでは目標達成の望みは薄い。

もうひとつの統計は4回転-3回転のコンビネーションジャンプの成功実績だ。現在の採点方式で飛ぶ4+3コンビネーションは6.0満点採点時代に飛んだときの価値には及ばないが、依然プログラムの難度を計る指標となる。

2015年の世界選手権で4+3を飛んだ選手は飛躍的に増え、2016年ではその数はさらに8名に増加。中にはジン・ボーヤンが飛んだ“4Lz+3T”という最高難度のものも含まれる。

4回転を試みた選手の数、成功数、そして4回転の種類、更には4+3コンビネーションの数から見ても、2016年の世界選手権で男子シングルのジャンプ難度は史上最高だったことがわかる。

2018年平昌オリンピックまであと2シーズン。それまでどんな難しいジャンプが新たに誕生するかはわからない。
しかし、我々がかつてない4回転の進化を目の当たりにしていることは間違いない。

今後、トップ選手たちは体を壊すことはないのか?ルール改正は4回転量産にどのような影響を与えるのか?難度争いは既に白熱しているが、先のことはわからない。”quad battle”は一体どこへ向かうのか―。それは時間が解決してくれるだろう。

(訳:まくりあ)

原文はこちら


素晴らしいデータ収集!分析された方、本当にご苦労様でした(笑)
シーズンとシーズンのはざまの時期に、楽しいコラムをありがとうございますって感じです。

黄金年齢は23歳ですか。五輪に関して言えば、女子はティーンネイジャーが圧倒的に強いですよね。
6.0満点採点の時代にも言及していたので、欲を言えばその頃のデータも開示して欲しかったな。2002年ソルトレイク五輪の頃はトゥループ1種類が主流でしたけど、銅メダリストのティモシー・ゲーブル選手はサルコウ飛んでましたし、その年の長野の世界選手権ではマイケル・ワイス選手がルッツを飛んでいた記憶があります(失敗したけどね)。ソルトレイク五輪チャンプのヤグディン選手と銀メダリストのプルシェンコ選手はともに4T-3Tにサードジャンプまでくっけたコンビネーションジャンプだったんですよ~。すごい時代でした。

2010年バンクーバーは難しい技に挑んだ選手が損をして、できることを丁寧に決めた選手が得をした大会でしたよね。ライサチェクさんはそれまでずっとクワド挑戦してた方ですから、余計に安全策取ったことが攻撃の対象となりました。本当に美しく、惚れ惚れするような演技をする方だったんですけどね。これをスポーツとして見るファンには後味の悪い結果でした。

私の4回転観戦史の中でもうひとつ衝撃的だったのは宇野選手の4フリップ成功です。涙の世界選手権直後のことでしたから、本当に男前でしたね。ボーヤンくん(あだ名は「天天」)、彼はもう・・・突然変異だと思いますっ。この2人が23歳黄金期になったときは再び歴史が動くかもですね。

(※文中で参照するよう促される「下図のように・・・」のあたりは、画像の引用が禁止されていたので、掲載できませんでした・・・残念ですがご了承ください

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