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世界選手権二冠の宇野昌磨:栄光への険しい道のり/中国メディア”搜狐”より

オリンピック2大会連続メダリストそして世界選手権二冠の宇野昌磨選手。「輝かしいキャリアを誇る彼だが、その道のりは決して平坦ではなかった」という美しい伝記のような中国の記事を紹介します。

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宇野昌磨 辉煌之路不平坦

「宇野昌磨 栄光への険しい道のり」

2023-05-26 搜狐.com
https://sports.sohu.com/a/679313569_121119581

日本の宇野昌磨は2018年平昌五輪、2022年北京五輪のフィギュアスケート男子シングルでメダルを獲得。その後、2022-2023シーズンのグランプリファイナルを初制覇し、世界選手権も2大会連続で優勝する。新たな栄光を手にした彼だが、その道のりは決して平坦ではなかった。

【引用元:搜狐】

ステファン・ランビエール

5歳のときから山田満知子、樋口美恵子に師事していた宇野昌磨は、平昌五輪が終わった翌年、両コーチの元を去る。新たなコーチが決まらないまま始まったシーズン、得意のトリプルアクセルが絶不調に。2019年の11月、グランプリ・フランス大会は8位という成績に終わり、これまで出場したグランプリ・サーキット13戦で初めて表彰台を逃す。宇野は悔し涙を流した。

身も心もボロボロだったそのとき、かつて世界選手権二冠を獲ったステファン・ランビエールが救いの手を差し伸べてくれた。2019年年末、宇野はランビエールの母国スイスに拠点を移し、アルプスの山々に囲まれる小さくひっそりとした田舎町で新たな選手生活を開始した。

「2019年、全く思い通りの演技ができなくて、新たな一歩を踏み出さねばと思いました。みなさんが支えてくれたから、シーズン後半は自分を奮い立たせることができたんです。それがなければ、あのとき引退していたかもしれません。」

宇野はそう振り返る。

ステファン・ランビエールが初めて宇野昌磨に会ったのは2012年、オーストリア・インスブルックで開催された第1回ジュニア・オリンピックの会場だった。ランビエールは宇野を見た瞬間、彼のスケーティング・スキルには伸びしろがあることを見出した。ステップは他の選手とは一線を画し、リンク中に撒き散らされる情感で満ち溢れていた。音楽の感性、自然で滑らかなスケーティング。特別な身体能力が備わっているだけでなく、「自分に必要なことは何か」「自分がすべきことは何か」を理解し、己の限界を超える才能も併せ持っていた。

宇野がスイスに来て3年。生活とトレーニングの環境は大きく変わった。
彼は5歳になる前からゲームを始め、日本のアスリート界きってのゲーマーでもある。毎日、スケートとゲームにかける時間は8時間ずつ。宇野にとってのゲームはスケートの合間をぬった休憩ではなく、競技と同じレベルの高い集中力を要する勝負の時間なのだ。しかし、2023年の世界選手権終了後、こう語っている。

「この2年間は大きな変化がありました。特にスイスにいるときは散歩に出る時間が多くなったんです。スケートの練習も8時間じゃなくて、連続3時間が限界です。」

時間は短くなっても、宇野のトレーニングは以前とまるで異なり、更なる高みを目指すため質が大幅に上がったのだ。

かつて宇野は1日3食全て肉が主食で、野菜は食べないと言っていた。しかし最近はトマトの美味しさを知り、野菜を摂ることの大切さを知った。日本の男子シングル最年長の選手として今年スケート歴20年を迎え、スケートに向き合う姿勢も更に成熟した。

「昔は失敗したくないという気持ちで練習に臨み、今はどうして失敗するのか、その原因を探るために練習しています。達成感があるので、スケートよりゲームの方が面白いと思わなくなったんです」

生活パターンの変化が宇野の練習や試合への臨み方に影響したのだろうか。フィギュアスケートへの情熱が高まり、ゲームは二の次となったようだ。

グランプリファイナル優勝の道のりはでこぼこ道

宇野は平昌五輪と北京五輪で続けて表彰台に乗った後、世界選手権で初優勝する。2022-2023シーズンは世界チャンピオンとしてグランプリ大会では新たな挑戦を求めた。

2022年11月、札幌開催のNHK杯。グランプリ大会も既に4戦が終わっていた。NHK杯はシリーズ全6戦のうちの5戦目で、12月に入ればトリノでグランプリ・ファイナルが開かれる。トリノへのチケット争奪戦も佳境に入っていた。NHK杯男子シングルは熾烈を極める戦いとなった。当季は多くのトップ選手が休場し、加えてロシア選手が不参加となったことで、毎回めまぐるしく新しい顔ぶれが表彰台に登った。これまでの4戦で3人の新しい男子チャンピオンが生まれ、NHK杯に出場する12選手のうち、6人が既にメダリストとなっていた。カナダ杯優勝の宇野、フランス杯でサプライズ優勝を飾ったアダム・シャオ・イムファと銀メダルの山本草太。そして韓国のチャ・ジュンファ、イタリアのマッテオ・リッツォ、日本の友野一希は自身第1戦目となる大会でそれぞれ銅メダルを獲得している。これはかつて例を見ない状況だ。結局この大会は、宇野が279.76点という昨シーズン得たベストスコアから30点も低い得点で優勝を飾った。試合後、宇野は「試合内容は完璧とは言い難かったけど、一番良い滑りだった」と結果を評した。

NHK杯ショートプログラム前日の公開練習中、宇野の表情は晴れず、焦りが見えた。カナダ大会で優勝した後、練習内容が思惑通りの効果を生んでいなかったのだ。

「練習でも毎日ジャンプの調子が違う。何度飛んでも成功しない」

思い通りに準備が進まず気が急く宇野。練習が追い付かない上、スケート靴にも問題が生じた。公開練習とショートプログラム当日、宇野はブレードの位置が合わず、何度も靴を調整していた。フリーの6分間練習で4回転ジャンプを失敗すると、左足のブレードが滑走の向きとは違う方向に滑っていくことに気付く。このままでは絶対にジャンプを飛ぶことはできない。

幸い、自分の滑走順まで4人の選手がいる。演技を待つ間、宇野はブレードの調整を試みた。そしてフリー本番。集中力を高めて4回転トゥループと3回転半を成功。4回転フリップは成功しなかったが、練習でもほとんど飛べていなかったので動揺することはなかった。それは当たり前のように聞こえるが、ブレード位置を調整して競技に臨むのは、宇野の言う通り並大抵のことではない。それでも慌てふためくことなく、冷静に演技に集中できるのは彼の豊富な試合経験が功を奏したのだと言えよう。

準備段階と大会中のアクシデントがありながら、NHK杯では最大限の力を発揮できた。だから理想通りの演技ではなくとも自分自身「一番良い滑り」だと納得することができたのだろう。

グランプリ・ファイナルは2022年12月11日、イタリアのトリノで開幕した。公開練習中、世界チャンピオンの宇野は穏やかな笑顔を見せていた。ステファン・ランビエールやチームメイトらと談笑し楽しそうにリハーサルを行った。3週間前、不安げに「緊張している」と話した宇野の姿はそこにはなかった。

しかしNHK杯を終えファイナルを迎えたステファン・ランビエールは「今シーズン、宇野昌磨の練習態度には問題がある。昨シーズンはもっと高い目標を掲げて励んでいた」と発言した。それに対し、宇野は「1日たりとも気を抜いた日はなく、NHK杯前の焦りも、もっと上を目指すが故の不安だったので、(そんな風に言われて)悲しい」とコメント。それでもコーチに言われたからではなく、自分の意志で更に練習に励んだ。普段は日本で練習しているので、コミニケーションがうまく取れず、お互いの考えがうまく伝わっていなかったせいかもしれない。

この一件を経て、宇野は逆にコーチに対して感謝の気持ちを持つようになった。自分は一年中スイスで練習しているわけではないのに、コーチはそれだけ自分のことを真剣に見ていてくれる。昨シーズン、宇野はこの靴を履いてオリンピックと世界選手権に出場している。だから靴が合わない訳はない。靴が悪いのではなく、靴が合わないと思い込んだことに問題があるのだと。

「僕は靴が合わないと思ったまま練習して何の意味があるんだろう、と思っていた。NHK杯が終わって、この靴でも良い成績が出せるんだとわかってからは、2021年と同じように毎日の練習に新たな収穫を見出すことができたし、思い通りの成果があった」

気持ちが落ち着いた宇野は名古屋入りして2週間ほど自主練を積んだあと、12月1日までスイスの拠点に戻って最高の状態に仕上げていった。

グランプリ・ファイナルのショートプログラムが始まった。
宇野は素晴らしい4回転を決め、全てのジャンプに加点をもらって99.9点で首位に立った。勝負のフリーは、全員がレベルの高い演技を見せた。日本の佐藤駿と山本草太は3つの4回転、アメリカのイリア・マリニンは4回転アクセルを含む5つの4回転・・・。

リンクの熱気が最高に高まる中、宇野昌磨は最後に登場すると、見事な4回転を3つ決めた。その後連続ジャンプにミスが出たが、どのジャンプも表現も揺るぎなく、滑りは伸び伸びとして力強かった。演技終了後、宇野はリンクに座り込み、まばゆい笑顔を見せた。フリー204.47点、トータル304.46点、初めてグランプリ・ファイナルを制した。

ステファン・ランビエールは、

「今日はどのスケーターもタフな滑りを見せたのですごく緊張した。でも昌磨がリンクに立ったときの自信に満ちた目を見て、大丈夫だと確信したんだ」

と話した。

宇野は、

「これは世界一を決める大一番で。周りの人たちは僕より緊張していたと思う。僕はすごく良い練習が積めていたので全く緊張することはなかった。」

2006年、ランビエールがオリンピック銀メダルを獲得した思い出のトリノ。16年の歳月を経て弟子の宇野が新たな喜ばしい記憶を刻み込んだ。

5種類6つの4回転は壮大な計画

2022年12月22日~25日、全日本フィギュア選手権。
宇野はこの大会、ほかの選手とは違う”判断力”を持っていた。ショートプログラム当日の早朝練習で異変を感じていたのだ。

― 体が思い通りに動かない

これはリンクの問題なのか、はたまた新しい衣装が体の動きに合っていないのか?
原因を探し出すために宇野は6分間練習を費やした。試合用の衣装を以前のものに着替え、衣装が原因である可能性を排除。その後、ジャンプ前の助走速度を上げると失敗が増える感覚があった。スピードを抑えると成功率が上がったため、本番ではいつもより遅めに助走することを決める。こうしてショートプログラムでは4回転フリップ、4回転トゥ+2回転トゥ、3回転アクセルに成功。2位に12点差をつける100.45点という高得点で首位に立った。

宇野は常に「試合のために練習し、練習のために試合する」という原則に則ってきた。彼のフリー・スケーティングはまさしく「練習のための試合」だった。宇野はライバルたちの演技をじっと目を凝らして見つめている。どの選手であろうと、苦戦を強いられることを忘れていない。フリーでは前半に多くのジャンプを編入しているが、ミスがあっても、消極的な考えは微塵も起こさない。むしろ後半に「新しい練習」を試す決意を固め燃え上がる。「新しい練習」すなわち、”3回転半+2回転半+2回転半”の3連続ジャンプだ。

実はフリーの前日、宇野昌磨は演技終盤の3連続ジャンプに比較的簡単な「3A+2A+2A」を組み込む代案を思いついていたので、そのイメージが頭に残っていたのだ。ルール上、男子シングルのフリー・スケーティングでは7つのジャンプを飛ぶことができる。この先、フリー・プログラムにもう1つ4回転を増やし、2つの3回転半は共にコンビネーションとする以外選択肢はない、と宇野は明かす。このため、新しい4回転を練習する以前に、後半に3回転半を増やすという難題を克服しなければならないと。もし宇野が新たに4回転ルッツをマスターすれば、プログラムのジャンプ構成は”5種類6つの4回転”となり、最後のジャンプは”3A+3A”に変える必要がある。これこそ、宇野が”3A+2A+2A”を練習し始めた要因なのだ。現在プログラムには5つの4回転を組み込んでいるが、たとえ試合でジャンプの失敗があっても、練習でお試し済みならば難なくこなせるだろう。宇野は今まさに、プログラムの難度を高める次なる一歩に踏み込んでいるところなのだ。

シーズンが終わると、長いオフが訪れる。それ故、宇野にとって今があらゆる案のお試し期間でもある。4回転ルッツをものにするも良し、4回転を6つ組み込むも良し、いずれにせよ壮大な計画だ。ステファン・ランビエールは、宇野が2021年の夏から4回転ルッツを飛びはじめ、成功する日も近いと自信を覗かせた。

ショートプログラムでの調整能力、フリー・スケーティングでの新たな連続ジャンプ挑戦、更には4回転ルッツ習得の計画。これも全て今後の試合のための準備だと話す宇野。既に新しいシーズンに狙いを定め、試合本番を今後の成長のための糧としている。

世界選手権二冠を達成

2023年3月25日、宇野は世界フィギュア選手権男子シングルのフリー・スケーティングでフィニッシュポーズをとった後、リンク上に「大の字」に倒れた。

今シーズン、宇野は力強い滑りを見せた。重い肩の荷を下ろした瞬間、彼は世界選手権を経て改めて深く考えることがあったと話した。まずはジャンプの調子は良くなかったということ。

「調子は最悪でしたけれども、落ち込みも焦りもありませんでした」

災難はそればかりではなかった。宇野はショートプログラム前日の公開練習中、4回転フリップで転倒し、右足を負傷していた。フリー・スケーティング後、ステファン・ランビエールは、世界選手権の1週間前にも宇野は同じ箇所を痛めていたことを明かした。ショートプログラム当日の午前練習に顔を見せた宇野は、曲かけ練習で全てのジャンプを成功させた。

いざショートプログラム本番。
音楽が鳴り始めると、4回転フリップ成功、4回転―3回転のコンビネーション、3回転半も成功させ、全てのジャンプに2点以上の加点がついた。ステップはレベル3と判定されたが、2つのスピンはいずれもレベル4となり、104.63点の高得点を獲得し、首位となった。演技終了後、宇野は久しぶりにガッツポーズを見せ、喜びを爆発させた。治療と試合前のメンテナンスが功を奏し、宇野の右足の症状はそれほど深刻ではなかったと想像できた。

フリー・スケーティングではどの選手も素晴らしい滑りを見せた。演技が終わるたびに、会場はスタンディングオベーションで彼らを称えていた。

ショート3位の韓国チャ・ジュンファはほぼノーミスの演技でトータル296.03点を獲得。同じく2位のアメリカのニューフェイス、イリア・マリニンは4回転アクセルを成功させてトータル288.44点。宇野昌磨はフリーに4種類5つの4回転を予定しているが、もし大きなミスをすれば連覇は難しくなる。

最後に登場した宇野は、会場から大声援が送られる中、リンクの中央に立った。3つ予定していたコンビネーションのうち成功は2つのみ、回転不足をとられたジャンプもあったが、それでも彼は高難度の構成に挑み続け、圧倒的な演技力で196.51点というハイスコアを叩き出す。トータル301.14点、宇野は世界選手権の連覇を達成すると、率直な思いを語った。

「正直、練習のレベルを超える滑りをしたかったので、ミスはあったけれども、まずはほっとしました。今日の演技はどうであれ、結果が出せたのでお世話になっている人たちに恩返しはできたのかな」

世界チャンピオンの栄冠を携える重みや更なる高みを目指す欲望は誰もが持てるものではない。宇野は決して自分に満足しない向上心の塊だからこそ、前進し続けることができるのだ。決して歩みを止めない姿が、彼の成功を裏打ちする真骨頂に違いない。

(作者:王泽峰/訳:まくりあ)

原文はこちら


・・・な、長い・・・笑。

全て既出の事実ばかりですが、まとめて書いていただけて素敵なストーリーが出来上がってますね。筆者さん、ありがとうございます!

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